2005年 ツインリンクもてぎで行なわれる大きなイベント 「 DE耐 」   用に作成したエイプ100です。
昨年作成したエイプとはまた違ったアプローチで作成しています。
今年のコンセプトは なるべくオリジナルで作って上位に食い込もう!  昨年のDE耐から早1年

色々なレースに参加させて頂き、色々なデーターが取れました。 どういうエンジン特性が速いのか

どういった部品が壊れやすいのか? 市販されている部品はなぜそういう設計になってしまうのか

色々考察して考えた結果、 エンジンはプロップマンスペシャルになりました。  もちろんまだまだテストを

繰り返し、速くする事に手を抜きませんが、DE耐が開催された6月4日 5日時点での最高のポテンシャルを

発揮できたかな?と思っています。

DE耐は初心者も楽しめる参加型レース。 「ショップが本気になるなよ・・」  と言う意見が出そうですが

私共のチーム員は 「ど初心者」 中には選手権にでていたライダーもいますが、基本的にはレースお初。

その初心者さん達に安全に楽しくレースに参加してもらうにはどうしたら良いか?

私の出した答えは 「優勝を目指せ!」  です。  ショップの人間が、お遊びレースだから気楽に

参加すれば良いよと言ってしまったら、街乗り、ツーリングの延長になってしまいますよね。

サーキットで行なわれる「レース」 は競争です。 勝ち負けを争っているんです。  みなツナギを着て

膝をすってマシンに伏せて・・ その中でコース脇のお花をぼーっと見ていたらどうなります?

死にます・・・   


趣旨としては簡単なライセンスで安価なバイクで

誰でも参加出来ますよー と言うイベントです。私は大賛成です。 これほど成功したイベントは他にあまり

ないのでは?とも思います。   勘違いしてはいけないのは誰でも参加出来る「レース」 という事。

誰でも参加出来る「ツーリング」 では無いと言う事。    ですので私も本気で戦います。

そしてプロップマンから参加するライダーには 「優勝目指せ! 」 の言葉をかけます。  その結果ビリでも

良いんです。 結果は結果。一生懸命頑張った結果です。   優勝を目指した結果 ビリでした。 これで良いんです。

2005年度の優勝を目指した エイプ100 です。
外見から、 フルカウルとシートカウルは 「Takezo」 製の
NSR50用 TZタイプカウル。 ネットで写真を見てかっこいーと思い
購入しました。 価格もお求めやすく、デザインはかなりかっこいいです。
エアダクトを付ける導入口がありますが時間が無く生かしてありません。
本当はここからエアーを導入してエンジン回りを冷したかったんです。
今年は公開練習からとんがった感じのカウルが非常に多かったので
イメージ的には丸い感じでいきました。
タンクはホンダNS50Fのタンクです。タンク単体は無加工で付けています。

中古で購入して付けましたがヘコミなどを直している時間が無く

そのまま塗装しているのは誰にも言わないで下さい。





見えずらくてすいません、ノーマルのタンクラバーが付く所を上に延長して
ラバーを付けています。 ノーマル位置だとメインフレームに当って付きません。
鉄でステーを作って溶接しています。 今後また仕様変更も考えられますので
溶接はがっちりつけていません。必要最低限の溶接です。
タンクは必ずラバーマウントにしましょう。
シートカウル下から前に向かって覗き込んだ写真です。
左右のシートフレームに鉄でステーを作り溶接してアルミに中空
パイプを橋渡ししています。 センターにネジを切ったカラーを溶接
してNS50Fのノーマルラバーマウントと生かしています。
これでタンクを揺すった時にグニグニ動きます。
振動対策です。
トップブリッジはキタコ製、のNS-1用。 ステムセンターナットを旋盤で穴を開け
中に差し込むカラーを作り、アルミ棒を溶接、アッパーカウルの耳の部分を
止めています。
左右先端はM6のネジを切ってあります。 この止め方が最近好きです。
フレームの先端に適当におっこちてた鉄パイプを溶接しました。

その内径に合わせてアルミ棒を作りアッパーカウルの先端を
止めています。 ステムに見える小さなボルトはハンドル切れ角を
少なくする為のものです。 エイプは必要以上に切れ角がありますので
カウル付けてタンク替えるとがっちんごっちん色々な所に当ります。
ハンドルは31φの溶接タイプ、バトルファクトリー製。
別のバイクで安い東南アジア製??のを購入してみましたが
精度が悪く通常の締め付けトルクではくるくる動きます。
ネジ山を壊す勢いで締めないと走れませんでした。
ここはやはり国産でしょうか。 バトル製は非常に精度が高いんで
採用しました。
オイルクーラー アールズの汎用品です。
取引業者がお安くしますので・・と言って持ってきたので
3つ買いました。 ステーはフレームのあまっている穴を使い
アルミステーを溶接して作りました。 
簡単に図面を作りオイルクーラー上面のステーを切り出し
そこに溶接しています。
フレームに溶接しても良かったのですが極力フレームに溶接
ってしたくないですよねー
右のカウルステーです。 いくらフレームの溶接可と言ってもフレームが
無ければ溶接もなにもありません。

右のケースカバーの2点を使いステーを作成、それにアルミ棒を流して
カウルを止めています。 もう少し凝ってベーターピン止めにしたかったん
ですが、これを作る時間が30分ほどしかなかったので妥協しました。
違うカウルやタンクを付けると色々な部分に隙間などが出来てしまいます。
タンクとシートの隙間が大きかったのでシートスポンジを重ねて
なんとなく隠しています。 これが無いとちOちんが挟まります。
エイプのノーマルサイズは420ですので415サイズのスプロケットを
作成。 17丁です。 リアは33で行きましたがまだショートで
ダウンヒルストレートは吹け切りまくりでかなり手前で戻していました。
エンジン仕様がトルクフルに振ってあるのでもっとロングにしないと
だめでした。チェーンはDIDの415です。
センターはクリップ止めにしています。脱落防止でワイヤリングは行いましょう。
今年は簡単にNSR50のリアホイールを入れました。
スイングアームはエイプのそのままですのでキャリパーの回り止め
の板だけ溶接しました。
バックステップは昨年の仕様よりも更に上げてバックさせています。
タンク形状、シート形状に合わせています。
ワンオフの利点ですね。  ハンドル、シート、タンク、ステップの関係を
ライダーに合わせるとびっくりするくらい乗りやすくなります。
コーナーリング中のニーグリップが格段に違います。
ステップはオーナーの意見で可倒式を採用。POSH製のNSR50用ステップ
です。 ステップが付くコの字の部分はNSR250Rを使うと作成も楽です。
エンジン編  写真はエイプのノーマルクランクシャフトです。
ストロークは45mmです。 ノーマルクランク利点は バラせる、
外形が円ですのでマスを稼げる、振動を抑えられる。
です。 ただちょと重いのが難点。  メリット、デメリットを良く考え
作成していきました。
クランクサイドベアリングなどをバラします。 
あまり変な力がかかると取れないどころかシャフトが曲がります。
エイプはクランクシャフトセンターにオイルラインがありますので
中空です。 簡単に曲がりそうです。
ばらしました。 サイドベアリング、スプロケットです。
ベアリングはばらしたらばるべく新品にしましょう。
円心フィルターと呼ばれている部分です。
フタは圧入されています。取れる構造では無いので
適当に穴を開け、バールでこじってとります。
は??! って思ったかたもいるはず。
何もありません。 空洞です。 はじっこに溝がありますが、
そこもOリングが入りますので意味無しです。
ここをオイルがぐるぐる回ってクランクピンから大端部へ
なんとなくオイルが流れます。 コンロッドのオイルジェットから
ピストンピンに向かってオイルが何となく飛びピストン、シリンダー
を冷し、潤滑させています。 高回転時にはオイルが足りなく
ピストンピンが焼けてシリンダーもかじります。
クランクの大端ベアリングも壊れる事も良くあります。
オイルポンプは大容量の物をおすすめします。ノーマルエンジンではこれで
十分なんですね。
そしてクランクシャフトを割ります。 大端ピンを抜き 大端ベアリングを
取ります。 エイプのベアリングはセットになっているのでは無く
全てばらばらです。  組むのもめんどくさいです。
円の外形を残したまま、テーパー状に切削します。
かなり軽くなるのと攪拌抵抗が減ります。
昨年のDE耐でこの加工をして色々テストしましたが
結果は良好でした。  
両方加工しました。 これを組んで芯だしをすると
手がザクザク切れます。血だらけになりました。
途中で革の手袋すれば良いんじゃん!と頭を使いましたが・・・
組み付けです。 芯だし台に載せ銅ハンマーでコンコン芯を
出します。 100分の3以下で十分です。
もともとの精度なのかそれ以下が出るクランクが少ないので
0.03mm基準で出しています。
あまりおっかけると弱いクランクになってしまいます。
円心フィルターのフタやOリング、クランクピン、大端ベアリングは全て新品です。
え? って思う人もいるのではないでしょうか?
エイプはクランクASSYしか出ません。

ちょっと公開出来ませんが今回のクランクはストロークを47.1mmにしてあります。
ノーマルの45mmから2.1mmストロークアップです。
クランクピン穴をオフセットして大径加工、スリーブ作成、でノーマルのピンを入れて
あります。コンロッドは短い物を使用しています。
クランク回りでは クランク単体の半分の重さが無くなっている計算になっています。
シリンダーはスリーブを作成して組んであります。 ノーマルのクランク
ケースは加工禁止ですのでぎりぎりまで追い込んであります。
プロップマンではピストンは他車種のノーマルピストンを使用しました。
58φです。 スリーブ外径は60φで作成。 1mm厚のスリーブです。
テストを繰り返し、割れない歪まない材質で作っています。
っていうかテストでも割れた事ありません。
クランクケースの穴径が60φです。 ガスケットもきっちり取らないと
入りません。 
これがケースの穴です。 ここをボーリング出来ればエンジン作成も楽なんですが
レギュレーションで禁止されている以上、出来ません。
コンロッドの小端径は13mmです。ピストンが13mmですから丁度良いんです。
ノーマルより短いのでオイルの回りも良いです。
シリンダ−ピストン、クランクはトラブルがありませんでした。
ピストンは普通のノーマルですのでクリアランスは0.03mm指定です。
鍛造の場合は0.05mmほど取らないと良く壊れますね。
クラッチはノーマル4枚に対して5枚仕様です。ノーマルではずるずるです。
タケガワ製は値段も高く、1次ギア比も変わってしまいます。
ここでもギア比はパワーに影響が出ますので
プロップマンでは純正流用で5枚化しました。
スプリングはPOSH製の20%強化スプリングを組んであります。
オイルポンプはキタコ製です。
ノーマルのシリンダーを使用しているのでオイルクーラーの取り出しが
ありません。のでRクランクケースカバーを加工して付けます。
キタコから出ているニップルを購入し取り付け。
これってかなり難しい作業ですよ? クランク軸に行くオイルラインは
絶対に圧が抜けないように組んで下さい。
ケースカバーにタップを立てるのですが、奥が行き止りですので
NO2とかNO3とかのタップを使用します。同じM8でも
仕上げ用など種類がありますので使い分けをしなければ
ネジが切れません。自信の無い方はショップでの作業をおすすめします。
組み付けた所です。 ネジ部には配管用のシールテープを
巻いてあります。 中には念のため小さいOリングも入れて
クランク軸のラインは圧が漏れないようにしてあります。非常に
微妙な部品ですのでレース毎点検をおすすめします。
割れていなくても定期的な交換が良いと思います。
ニップル自体は安いです。
シリンダーヘッドはタケガワのステージ2を全車使用しています。
ステージ3も発売されていましたが、スペックを見る限り
「うーん・・・」 と不安がぬぐえないので購入しませんでした。
バルブガイドはアルミ青銅(ABB)から削り出して
使用しています。長さ寸法はそのままにテーパー角だけ
変更、先端の肉厚を稼いでいます。
非常に堅い材質です。 7時間の耐久でもまったく問題ありませんでした。
上から見た写真です。 ステムシールは新品にしてあります。
バルブはタケガワのステージ2を使用しています。
スプリングも本当はもう少しレートを下げたいのですが
探している時間がありませんでしたのでそのままタケガワです。
真ん中の四角い穴がカム山を潤滑させるオイル溜まりです。
この部屋と上に見えるあまっている部屋を貫通させて上の部屋にも
オイルが回るようにし、カムのセンターに大きな穴を開け、ジャーナル部も
小さな穴を開け、カムシャフトの中からもオイルが回るようにしてあります。
DE耐前、次々と組まれて行くエンジン。

組み付けの時に注意しているのはピストンとヘッドの
クリアランスとバルブとバルブリセスのクリアランス管理です。
半田や粘度を使いなんども測定しクリアランスをガスケットで
合わせます。もともとがレーサーでは無いのでガスケットも
各部品もけっこうクリアランスがまちまちです。何度もばらして計るのは
メンドクサイ作業ですが、特殊な作業ではありません。
せっかく楽しいレースの参加するのですからちょっとした手間をかけて
組んでみて下さい。 うまく行った時は何も感じない物ですが
失敗した時は「やっとけば良かった!涙」 となります。私もそうでした。



今回の仕様でもてぎを2分41秒で走りました。 雨の中でも2分57秒です。 ライダーが込み合っている時に
耐久だからと抑えて走ってのタイムでした。 まだまた詰めれるタイムです。 そのタイムで燃費はリッター30です
プロップマン風 エイプの楽しみ方でした。



全てのエイプユーザーを応援していますので上記エンジンだけでなくノーマルエンジンでも市販ボアアップエンジンでも車体周りでもなんでも遠慮なく相談して下さい。